■ W o r t e n ■
Ob um strahlt von Licht und Granze,
unsre Heimat ist nicht hier!








2003/1/7

わたしの記憶をとどめるのは白い布に残るかおりだけだといって
わたしのかおりは残るのにそこにわたしはいないといって

けれどわたしを置いて遠くへいってしまうのはあなたも同じでしょう









2003/1/7

傷跡を踏まないよう
嘘をかさねないよう
あなたは迷いあるく

怯えて逃げればいい
あなたをささえる腕
投げ出された意識を
つなぎとめる指から

あなたの溢す真実は
やがて嘘に変わるの
わたしの並べた嘘が
真実を奏で出すころ









2002/09/10 置き去りの夏

ひとやすみはいかがとわたしに傾けて招く日傘のあなたの睫毛

白衣の裾はんだの焦げ目に目をやりながらあなたの姿を忘れないように

どこへも行かないとそんな約束が嘘じゃない永く変らぬ君の仕事場

終わる夏を縋るように追うこの記憶とつめたい夜の街灯と月

朽ちた腕投げ出された胸ただ冷えてたどりつくさきは雑踏の角

やがて嘘となる未来なんていらないでしょうわたしはただ今がいっぱい欲しい

うだるような熱にうかされ真夏の夜迷いか罪か決めかねて泣いた

帰る場所も辿着くさきも要らないのいま手に触れる君のいとしさで










2002/09/10

君は飾らない
迷い果てる真昼のした
どんな真実も身に纏わない

わたしの咽喉を
君が逃げていく

その指がここに残した
わたしとひきかえの嘘ばかり

耳に残る
ただそれを歌う









2002/5/17

ふるわせる指に奏でられて歌う弦のおとあなたの掌に似て肌へ落つ









2002/03/29

雨に匂う花の甘くて重い空気に湿度にただむせ返る真昼









2001/3/24

桜の房に満たされてあれ限り知れぬこのいとしさとせつなさと闇よ









2002/3/20 apres un reve

君が触れたあとの膚は火傷のようで帰途にガーゼのcotton lawn









2002/3/19 音楽のささげもの

en cadeau サッシュベルトを解く指の拙さが語る 嘘ではないと









2002/3/18 おたんじょうび、おめでとう

もくれんの花弁のさくりとした味に歯触りにきみは春を知るという

ちいさくてかそけくてでも確りとして大地を青く染めるその花

つたの這う古い校舎の壁に倚り切り抜かれた空に届かぬこの腕

きれいだと最早聞き飽く常套句嘘は痛んで心地よく甘い


はりのうつわその透明な緑色注がれてある狂気の赤と

るりのいろは交錯する記憶の交じり合うきみのすがたの甘すぎる嘘

かおる桜たちのぼる白いいろの虚構失くすべくして与えられる君よ



望月春香さま。
すうはちょとがんばりました。「づ」が「つ」になってしまったのがこころのこりだけれど。









2002/3/12

君の道を照らす灯火でありたくて魂を奪う天使でありたい









2002/3/11

黄金なすミモザの房の重い春 君の眼鏡を曇らすfate









2002/3/7

厭わしいけれど願わしい最後の夜 この手の無実を誰ぞ語らめ









2002/3/3

この指が捉えた解き放った君がかくもいとしき罪深き昼

揺れる視界揺るがぬ腕に触れたくてときに怯えて指差し伸べず

届かぬことば 好きでも嫌いでも構わない 欲しいのはただ君のその肌

忘れていた遠い昔の夢あわく歌いはじめる店先の箱









2002/2/28

その襟のレースの編み目に流し込まれる僕の眼差しを君は知らない









2002/2/22

白く濁る視界のふちに降る世界奏でた腕は傷で濡れたまま

記憶の底拒否をくりかへし閉ぢた眼の瞼を染める白いしずくよ

嘘を奏で真実を黙し抱く腕の生々しさになにもできなくて









2002/2/21

歌わない泣かない叫ばないといって黙した君は冷えた骸だ









2002/2/20

甘いあまい絶望はただ降り積もるあの雪に似て君を蝕む









2002/2/18 fallen zusammen|fallen

この身体を蝕むように触れるその指はわたしに何を残したの









2002/2/17

真夜中のわたしの肌で火傷してうすらかに燃ゆ嫉妬の焔









2002/2/14 にがくない

白くしろく雪に溺れる視界
あなたの舌に触れるわたしのこころ

(pour "anniversaire de Saint-Valentinois")









2002/2/13

ただひとつの真実を守るために
重ね始めた嘘のなんという数よ
それはただいちどするりと逃がしてしまったグラスが
床のうえでいくつにも散りばむ硝子の破片となるかのように









2001/2/12 sugar painful snow

すり抜けて
この手から
逃げていく
このうたを

つかもうと
のべた腕は
嘘のかずの
傷がついて

捉えようと
した真実は
流れた血に
翼得て死に

たからかに
空へ逃げる
ゆるやかに
宙へ融ける

のこされて
この身体は
痛みだけで
生きていて

やがて降る
雪をあおぎ
終わらない
ときを嘆く









2001/2/1

うたをたしなむと伝えたのだろうかあなたの唇はただしくくりかえすタンギング









2001/2/1

この肺は空虚な楽器フリュートでもクラリネットでもなくただ奏者のままに









2001/1/27

ゆるやかに距離を縮めるその鼻の筋のますぐを知ろしむしぐさよ









2001/12/19 ヴェルレエヌの手触り

あなたは本や紙切れやおもちゃのようなものばかりを欲しがるの
けれどわたしはあなたとの甘やぐ死しか欲しくない

トリスタンも言ったわ









2001/12/18 少女質の温度、またはfrill complex

かく在れかし そう願う強さ以てこちら向くちいさき身体 わが手へと降れ

「かく在れかし」 きみのまなざしを融け出る言葉 古き言葉で祈りの文言











2001/12/15

眺めていたグラスのなかはまるで世界のすべてで
そして浮かんでは消える泡は例えば死んでゆくわたしたちのようで

あなたの朽ちためにわたしが映らないように

わたしとてあなたをまなざしで捉えてなどいなくて

グラスの底から生まれている空気の粒は
かろやかに
憂いもせず
嘆きもせず

わたしはいまここで消えてしまいたい
ここで









2001/12/14 Blumen

音もなくわたしの指で潰える花はそれはしづかに掌を蝕む

白い花弁の突起する変移のいろ仄か昨日の罪をなぞる胡蝶蘭









2001/12/11

殺ぎ落とされる 焼き切られる それはそれは甘い 儀式









2001/12/11

すべての歌は疑問から嫌悪から叫びから生まれ出て
そしてこころの箱を抉じ開ける

好きから始めるひとなんて わたしは信じない

leave me alone please









2001/12/11

宵待草 待てど暮らせど来なくても あなたの嘘はわたしの 真実









2001/12/1

指を染めた真白き絹のその擦る大地に散らす幾億の死よ

指に飾る鎖のはじの糸のいろ疑うことも知らぬ血のいろ

首にかかる軛の重き支配音きみの喘ぎにかかるF音

その白きはだえに重ね歌重ね高らかに讃えよ天使の楔を

奏でられない調めの放たる真夜中のミサの和声に折り込まれる君









2001/11/25

泣いたり叫んだりするとその腕は落ちるわたしをやさしく縛る









2001/11/25

ためいきは叫びにも似せてきみの耳を汚して穿つ桃色の棘<









2001/11/25

この指であなたの教えた絶望の触れる希望にかかる喘ぎを









2001/11/14

此のちひさく力なき手で触れたくて 指を伸ばして 何もできなくて









2001/11/13

融 け な い 雪









2001/11/11

甘すぎて優しすぎてその声はきらきらとしてこの眼は盲いる









2001/11/11 Souvenirs de BAYREUTH


指から逃げる想い出は D-Dur / h-moll









2000/11/30 展翅板

かわいそう。
花弁をしろく汚して咲いているこの花は、かわいそう。
だって、しずくまで白いもの、きっと汚されてしまったのだわ。
あたしと同じ。もう血も流さなくなったあたしと、同じよ。
だから、贖罪のいろに染めてあげる。せめてあたしのカンヴァスのなかでずっとずっと、綺麗なままの花でいられるように。

ほんとうの緋は、絵の具では出せないことを知っているけれど。









2000/7/13


記憶は遠く華やぐ甘やかな目眩









2000/7/7


今言った君のことばを信じたくなくてコップの水にわたしを沈めた









2000/6/19


飛散する音楽 ただ掴んだ指の隙き間から逃げる 音韻のかけら









2000/4/14


トンネルの闇に散り映ゆ真昼の桜のその白さよ









2000/4/13

 リディア旋法の終止音に似たため息を伴って、妹はわたしの腕のなかで死んだ。
 緋色をした妹の血が、白い綿のワンピースをあざやかないろに染めていったさまを、わたしははっきりと覚えている。幼さばかりが残る華奢な胸を紅く彩どったその血は、樹枝めいた細い腕やレースで飾られたペティコートを、妹のいろに変えて。--これは神聖な儀式なのだ。
 銀色をした無機物が、わたしの手のなかできらきらと踊る。そのたびに妹の傷口から、美しい液がこぼれ落ちてゆくのだ。それは色あざやかな証拠となって、まるでこの世の禁忌のための贖罪のように、聖別の儀式を縁取って。そうだ、君のせいだ、だって君は僕の前で、あんなにも美しい声で泣いたから。言葉を飲み下したわたしの唇をこじあけてためいきは、妹の蒼ざめた頬に風を生む。
 --糸の切れる微かな音がして、滑稽な形の模造真珠がいくつも、緋いいろをした地のうえに散った。









2000/4/2

逃げてしまったことばの端を追って 足を踏み外した
消してしまったはずの記憶を辿って 纏いつく絶望よ

もはやそんな事実の存在すら 意味がないというのに






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